第三世代暗視スコープ(ナイトビジョン)の特徴と種類

暗視スコープ(ナイトビジョン)を検討されている多くの方が、光倍増率が最も高い第三世代を調べている様です。

⚠しかし、第三世代の暗視スコープは一般ユーザーへの販売、輸出入は認められていません。一部、官公庁の証明書が有れば販売・購入が可能となっています。

その為、一般の方が趣味や業務用として購入・入手することは基本的には不可能です。金額的にも約100万円前後というかなりの高額であるため、現実的ではありません。

第三世代の購入を検討されている理由の多くがこれらのようです。

  • 夜中でもはっきり見える暗視スコープが欲しい
  • 光倍増率が高いため暗視スコープが欲しい
  • 映画やFPSに憧れた

これまで、一般の人が購入できる最高レベルの暗視スコープが第2世代と言われてきました。そんな第2世代もやはり第3世代には光倍増率や造影では届きません。

しかし、近年になり、第2世代を超える造影が可能な世代が登場しました。第三世代レベルとまでは行きませんが、第三世代に近いはっきりと視界が確保できる暗視スコープとして人気を博しているのが第2.5世代暗視スコープです。

 

➾第2.5世代暗視スコープ

 

それらを踏まえた上で、第三世代暗視スコープのご紹介です↓↓

第三世代暗視スコープの進化

第三世代暗視スコープは光増幅効率に優れた「MCP型光電子増倍管」を第二世代から引き継ぐとともに様々な改良を施され、高い性能を獲得しました。

第二世代ではおよそ20,000倍ほどであった光増幅率は約30,000~50,000倍に達し、有効視認距離は星の光の下で約1,900m、月の光の下では3,400m程度まで見ることができるようになりました。

ヒ化ガリウム素子の採用

ヒ化ガリウム素子はMCP型光電子増倍管の構成要素として採用されました。それによって検知可能な波長域は大きく拡大し、近赤外領域まで見ることができるようになりました。

近赤外線の可視化は、つまり夜間・暗所での戦闘においてアクティブ方式の暗視装置が無力化されたということです。アクティブ方式は自分で近赤外線などの不可視光線を照射し、その反射光を増幅させて暗所を可視化しますが、第三世代の暗視装置にとってこれは自分から光って場所を教えてくれているようなものなのです。

第三世代の登場によって各世代暗視装置の需要には決定的な変化があったと思われます。

イオンバリアフィルムの採用

第三世代ではイオン・バリアフィルムが光電子増倍管に組み込まれるようになりました。これにより増倍管の寿命が伸び、加えて感度が大幅な上昇を達成しごく微弱な光量でも十分な視野を確保することができるようになりました。

また第二世代までの暗視スコープでは、映し出された映像に「ブラック・スポット」と呼ばれる黒い点が散見されましたが、第三世代ではほとんど見られなくなっています。

パッシブ遠赤外線方式(サーマルイメージ)の登場

第三世代では、「パッシブ遠赤外線方式」(サーマルイメージ)を採用した暗視スコープが登場します。

常温の物体はすべて遠赤外線(赤外線のうち最も波長が長いもの)を放出しています。パッシブ遠赤外線方式はこの遠赤外線を検知・増幅して映像化する仕組みです。

遠赤外線は一定以上の温度をもつ物体すべてが放出しているため、この方式は完全な暗闇の中でも機能します。

光源を必要としない点で微弱な光を増幅するより優れた方法と言えますが、実際は微光増幅装置を中心に据え、パッシブ遠赤外線方式は併用するにとどまっている場合が多いようです。

第三世代暗視スコープの種類

第三世代はその性能の高さから、使用することができるのは官公庁に限られています。したがって私たちが第三世代の暗視スコープを手に入れることはできませんが、そのうちのいくつかについて紹介したいと思います。

個人用暗視装置 JGVS-V8

「JGVS-V8」は日本のNEC社が生産する暗視装置です。

この暗視装置はアメリカのITT社とリットンインダストリーズ社が製造した「AN/PVS-14」をNEC社がライセンス生産したものであり、陸上自衛隊で使用されています。

片目用であり、多くの場合ヘルメットに取り付けるか片手で直接もって使用されます。

ライトノベル「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」や、映画「ミッドナイト・イーグル」等で使用されていたことでも有名です。

個人暗視眼鏡 JAVN-V6

こちらも自衛隊が使用する暗視装置の一つです。

歩兵が使用するJGVS-V8は単眼式のため遠近感がつかみにくく、航空機のパイロットたちは双眼式のJAVN-V6を装備しています。

AN/PSQ-20 ENVG

この「AN/PSQ-20」はアメリカ軍で採用された実績を持つ、単眼式の第三世代暗視スコープです。

第三世代の採用するパッシブ方式には、極端に光が少ない場所では十分な視野を確保できないという欠点があります。それを補うためにAN/PSQ-20にはパッシブ遠赤外線方式が併用され、環境に合わせて二つの光増幅方式を切り替えることが可能になっています。

ただ単体価格はかなり高価であり、JGVS-V8が1セットおよそ70万円ほどであるのに対して、AN/PSQ-20は約200万円にまで跳ね上がっています。